狼男



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“キィィィ”と錆びれた扉が開くと共に、
それまで包んでいた静寂が止む。


待ち合わせの時間ちょうど。

俺の姿を捉えたその人は・・
予想通り“エッ・・”と小さな声を挙げる。


「・・・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・・・。」


「お久しぶりですね小松さん。
神奈川県警の玉置です。」


「・・・玉置さん・・・・・。」


「この度は捜査協力ありがとうございます。」


「・・・・・・・・。」


まさか俺が居るとは思っていなかったんだろう。


こんな形で・・数年前、手錠を掛けられた刑事と再会するとは思わなかったに違いない。


「まるい探偵事務所ですか・・。
働き口を見つけられて何よりです。」


「はい・・それまでは紆余曲折しましたけど・・今はここでお世話になっています・・。」


「・・・・・・・・・。」


「あの玉置さん・・・・。」


「はい。」


「指輪・・・玉置さんがずっと保管してくれてたって・・

出所の日に看守さんに教えてもらいました。」


「・・・・・・・・。」


「本当にありがとうございました。

お礼を言わなきゃって・・でも・・
遅くなってごめんなさい・・。」


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