狼男


―――――― 


「お待たせしました・・・。」


「阿呆。見舞いにどんだけ時間掛けてるんだよ。」


「ごめんなさい・・・。」


「急ぐぞ。ユカリから“うな重食べたい”って連絡がきた。

これ以上待たせると、[北海道行って蟹とウニとイクラ買ってきて]って言い出しかねない。」



「・・・アハッ・・・アハハ・・!」


「なんだ?急に笑い出すな阿呆。」



急発進でうなぎ屋さんまで飛ばす助手席。

無意識のうちに・・
右手に視線が落ちる。



右手薬指に巻かれる・・

シンジ君がこの世界にいた証・・
シンジ君と一緒に生きた証・・。



「その指輪、10万もしない安物だろ?
何がそんな大事なんだ。」


「藪さんはユカリさんに何かプレゼントしないんですか?」


「阿呆。毎日昼飯買ってやってるじゃねぇか。」


「たまには形に残る物をあげると喜ぶと思いますよ。」


「例えば?」


「・・・手紙?」


「ド阿呆。あいつの事だから、一文字も読まずに鼻嚼みに使われて終わりだ。」


「・・・アハハッ!!」


「今日はよく笑うな阿呆。」



< 117 / 125 >

この作品をシェア

pagetop