狼男
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「お待たせしました・・・。」
「阿呆。見舞いにどんだけ時間掛けてるんだよ。」
「ごめんなさい・・・。」
「急ぐぞ。ユカリから“うな重食べたい”って連絡がきた。
これ以上待たせると、[北海道行って蟹とウニとイクラ買ってきて]って言い出しかねない。」
「・・・アハッ・・・アハハ・・!」
「なんだ?急に笑い出すな阿呆。」
急発進でうなぎ屋さんまで飛ばす助手席。
無意識のうちに・・
右手に視線が落ちる。
右手薬指に巻かれる・・
シンジ君がこの世界にいた証・・
シンジ君と一緒に生きた証・・。
「その指輪、10万もしない安物だろ?
何がそんな大事なんだ。」
「藪さんはユカリさんに何かプレゼントしないんですか?」
「阿呆。毎日昼飯買ってやってるじゃねぇか。」
「たまには形に残る物をあげると喜ぶと思いますよ。」
「例えば?」
「・・・手紙?」
「ド阿呆。あいつの事だから、一文字も読まずに鼻嚼みに使われて終わりだ。」
「・・・アハハッ!!」
「今日はよく笑うな阿呆。」