狼男
「さて、ようやく本題に入りましょうか。」
対面に座っていた椿刑事部長が立ち上がって・・俺の隣に座り直す。
それは・・“声のボリュームを落とせ”という無言のメッセージを発しているように感じた。
「容疑者候補が見つかり、“犯人だ”と確信が持てた時点でその人物を殺してください。」
「!!?」
「君の立場は私が必ず守ります。
任意同行も取り調べも逮捕状も要りません。その姿を見つけ次第、殺してください。
大事な事なのでもう一度言いますが、
君の行動の正当性は私が後から何としてでもこじつけして、
“警察の対応に問題は何も無かった”という結末に持っていきます。」
「・・・その為の・・刀ですか・・?」
「遠距離なら銃で、接近戦なら刀で。
ユウマ君。これは君にしか頼めない密命です。鮫島くん達には決して喋らないように。」
再び席を立ち上がった椿刑事部長がご自分の机へと向かうと、
引き出しから何かを取り出してまた戻ってくる。
その手には・・・小刀か・・?
卒業証書が入ってる筒ぐらいのサイズの黒い鞘を俺へと差し出す。