狼男
第6話
第6話
*******************************************
白菜も、焼売も、春巻も・・
不思議なほどに辛さを通り越して・・むしろ“美味しい”と感じられるようになった。
額から噴き出す汗。
目から溢れ出る涙。
全部出し切ったから、
“誰かに話を聞いてもらえる”喜びを感じたから、
真剣に・・椿さんが話を聞いてくれたから。
もう何杯目の牛乳?と思いながら・・
グラスを持ったまま・・
その後の韓流ドラマの話も聞きながら・・
いつの間にか・・何年ぶりかに・・
少しだけ・・笑う事ができた。
「ご馳走様でした。
ありがとうございました。」
「女子会を終えたから明日から“アンナさん”と呼びますね。
私の事はユカリと呼んでください。」
「・・・はいっ。」
激辛中華料理屋さんを出る頃には、
すっかり満月映える夜空になっていた。
この5年、ずっと心の中に閉じ込めていたシンジ君との思い出が解放されて、
帰り道を歩くこの両足は・・
不思議なほどに軽やかになっていた。