☆表の顔と裏の声★
私が今食べたい物も、すぐに伝わる。

ジューっという美味しそうな音と香ばしい匂いに目をぱちぱちさせていると、裕也は上手に焼き上げて私のお皿に乗せてくれる。

「ぉにく、ぉいしい!」

「俺が焼いたから美味しいのかな」

「ぅん!ぁりが、と」

焼肉を頬張りながらご満悦な笑みが溢れると、
裕也は嬉しそうにまた焼いてくれる。

けれど、こんな時でもふと思い出す事があって…
小さい頃に家族で食べた焼肉の風景、
自分は食べずに肉を焼いてくれるお母さん。

そんな悲しさが蘇るとそれは恨みに変わって、
喉の奥を締め付けられたように声が出なくなる。

「七海?もうお腹いっぱいか?」

「…ぅ、……」

裕也は肉を焼く手をストップさせ、私の隣に座ると優しく背中をとんとんしてくれる。

「大丈夫。」

いつもそう言ってくれる裕也は、もしかすると
自分にも言い聞かせているのかもしれない。

(大丈夫……俺達は、悪くない…)

裕也の声が聞こえた気がした。

「……だぃ、じょぅ……ぶ、だょ、ゅぅゃ、くん」

私もそう言ってあげられるようになった。

(大丈夫……私達は、悪くない…)



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