☆表の顔と裏の声★
この人は、声の出ない私との沈黙の空間も、
気にならない様子で私のそばに付いていた。

(この人、誰なんだろう…見たことないけど
先生かな…)

「今、俺の事誰なんだろう?って思った?」

私は胸を押さえる手に力が入り、
目を一瞬大きく開き驚いた。

(!!えっ!!どうして分かるの!?)

「はっはっ。俺も同じ事思ってたよ。
初対面で抱きついてきたこの子は、誰なんだろうってね」

今度はみるみる自分の顔が赤くなっていくのが
分かった。

「はじめまして、八嶋裕也と言います。
大学院生で、今ここに実習に来てるんだ。
よろしくね、七海ちゃん」

(実習生……やしま、ゆうや…)

自己紹介をただ黙って聞いていた私は、
いつもの作り笑顔もせずに、じーっと裕也の
顔を見つめていた。


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