☆表の顔と裏の声★
「七海!!」

待合室にいた蓮は私を見つけると、心配そうに
近付いてきて申し訳なさそうに謝った。

「ごめん……俺が気分悪くなるような事言ったから………七海に辛い思いさせて、本当ごめん!」

私は電子メモを取り出し、

【れんはいい子だよ。れんの目はキレイだよ。】

と書いて俯く蓮にそっと見せた。

「…ぁりがとう……七海」

けれど、涙声の蓮はなかなか頭を上げない。

【チョコ、食べたいな。】

続けてメモを見せると、蓮は涙を拭いてやっと
顔を上げ、頑張っていつもの優しい笑顔を見せて
私に大事なチョコをくれた。

「ほら、食べろ。」

私も頑張ってニコニコしてみるけど、
やっぱり、私達の心は哀しみでいっぱいなんだ……


そんな2人のやり取りを見ていた裕也は、
帰り際、私に声をかけてきた。

「七海ちゃん……人の為に、無理に笑わなくても
いいんだよ。自分の為に笑顔になれるといいね」

(どうしてこの人は、私の事が分かっちゃうんだろう……)

私はしばらく裕也から目を離す事が出来ず、
真顔でじっと見つめていた。
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