☆表の顔と裏の声★
【先生は、お元気ですか?】

「あぁ、まだ元気に子供達の診察してるよ」

【たくさんお世話になったのに、お礼も言えずに診察が終了して、気になってました】

「優しいんだね、青木さんは。私達はお礼を言われる程の事はしていないから、気にしなくていいんですよ。けど気持ちは伝えておきますね」

私は安心してうっすら微笑んだ。

「青木さん、今困ってる事や辛い症状とかは
ありますか?問診票には特に書いてないけど、
声は今どんな感じですか?」

【声はたまにでます。返事程度なら。
困ってる事も辛い事もありません】

と書きながら、私の顔は辛そうだった。

「声が出なくなったきっかけは、書けますか?」

ペンを持つ手に力が入り、何も書けなくなる。
いや……書けるけど、書きたくない。

あの事件の事、裕也に知られるのが怖いから。





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