吐息
一度目を閉じて、大きく息をする。
それから、ふっと吐くとシーツで身体を包み、立ち上がった。
寝室を出て、廊下を突き進む。
音が聞こえてくる部屋の前まで行き、遠慮がちにドアノブをひねった。
途端に広がるコーヒーのいい香り。
落ち着いた家具で統一した広いリビング。
そこに、飛鳥さんはいた。
「おはよう、華」
対面式のキッチンに立つ彼が、私に笑いかける。
優しい笑み。
胸がぎゅっと苦しくなるのを感じながら、私も目を細めた。
「おはようございます。……飛鳥さん」
それから、シャワーを浴びておいで、と言ってくれた飛鳥さんに甘えて身体を流した。
お風呂から上がると、彼は服を準備してくれていた。
グレーのパーカーと黒のスウェットは、飛鳥さんの匂いがした。