吐息
「華」
その声に振り返る。
真咲さんが、車の運転席から顔を出していた。
「真咲さん……」
「おまたせ。ほら、送ってやるから乗れよ」
車へ乗るよういざなう真咲さん。
「あの、話が……」
「なんだよ。しけたツラして。とりあえず乗れって。話は車の中で聞くから」
「でも」
「いいから、な?」
「……はい」
私は、バッグを肩にかけ直すと、足を踏み出した。
黒いベンツの助手席で、遠慮がちに息をする。
煌びやかな吸い殻入れ。
派手な内装。
真咲さんが担当のときは、いつもこの車で送ってもらうけど……苦手。
私には似合わない気がするから。