吐息
昔、ずっと欲しいものがあっても、自分のものにならないと思ったらすぐに譲ってた。
ささいなものも、大切なものも。
求めちゃいけないと思ってた。
だって私はそんなたいした人間じゃないからって、そう諦めていた。
でも、いつだったか言った。
母が……言ってくれた。
死ぬ間際のこと。
「ねぇ……華。これまでずっと我慢させてごめんね。私が縛ってしまってて、ごめんね。でも、これからは……もっと自由に生きて。欲しいものを、欲しいって言っていいのよ」
ーー人は、わがままな生き物だから、
欲しがったっていい。