吐息


昔、ずっと欲しいものがあっても、自分のものにならないと思ったらすぐに譲ってた。







ささいなものも、大切なものも。







求めちゃいけないと思ってた。







だって私はそんなたいした人間じゃないからって、そう諦めていた。







でも、いつだったか言った。





母が……言ってくれた。







死ぬ間際のこと。







「ねぇ……華。これまでずっと我慢させてごめんね。私が縛ってしまってて、ごめんね。でも、これからは……もっと自由に生きて。欲しいものを、欲しいって言っていいのよ」







ーー人は、わがままな生き物だから、





欲しがったっていい。





< 162 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop