王女ちゃんの執事2『ひ・eye』焼きそばパン、リターンズ。
「センセ、おれらの答案持ってきて、ここで残りは受けさせてよ」
「そりゃダメでしょ。きみらもう監督者なしに廊下とか歩いて来ちゃったじゃん」
「木村マジ具合悪いのに、カンニングしたってか?」
 ベッドに横になった木村の身体がギクリと弾む。
 おれはとことんダークヒーローだ。
「先生は信じるけどさぁ」
 規則は曲げられないってか。
 ザッツ公務員。
 おとといきやがれ、だ。
「そういえば、きみら3年て言ったっけ。――どうする?」
 腕に抱えた書類ばさみにペンを走らせながら、オバチャンがベッドの木村をのぞきこむ。
「えと、木村くん。きみはここで次のテスト受けるかい? 今回のテストで内申、決まっちゃうからね。内申点も必要な大学に行きたいなら、多少無理してもさ。ここならすぐ横になれるし……。がんばってみたら?」
 内申点! 
 そんなものを考えたこともなかったおれって、どこまでお気楽野郎なんだ。
「センセ! そうしてやって! 木村、数学得意だからさ」
「よし。じゃ、きみ、なにくん? ま、いいや。きみがいるうちに先生、数研で問題用紙もらってくるよ。ちょっと木村くん看ててやって。木村くんは10分でも20分でも、この時間で眠っておきなさいよ。テストのために徹夜して、あげく具合が悪くなるんじゃ本末転倒だぞ」
「はーい」
 返事をしたのは名無しのおれ。
 木村はかたくなに背中を向けている。
 誰に? 
 もちろん、おれに。

< 17 / 37 >

この作品をシェア

pagetop