王女ちゃんの執事2『ひ・eye』焼きそばパン、リターンズ。
 こくりとうなずいて、町田はドラムのうしろの定位置へ。
 足立は、おれと町田を底辺とする正三角形の角へ。
 鼎談の見本のような位置にそれぞれ腰をおろす生真面目ぶり。
 まいったなぁ。
 おまえを巻きこむつもりはなかったんだ、町田。
 そこだけは、ちゃんと見えてくれよ。
 弁解するのは、もっとめんどくせぇからな。

「足立、おまえ木村と(おな)中だよな。木村ん()のこと、なんか知ってるか?」
 足立はおどおどとドラムセットの後ろの町田に視線を流して、うなづいた。
 町田もさっきから顔を真っ赤にしてうつむきっぱなしだ。
 ふたりの位相がズレているのを知っているのはおれだけ。
 でもって、めんどうだから、おれはふたりとも放置。
 悪らつ?
「木村んとこって。なんか複雑?」
「えと、あの、木村くんが話さないことは、あたし――…」
 いい女だな、足立。
 久々の感動をありがとう。
「木村は話してくれたけど、客観的な意見も聞きたいんだ」
 だから、おれがうそつきになってやる。
 足立は見るからに肩の力が抜けたふうにうなづいた。
「あたしから見てもね、異常だと思う、木村のお母さん。…そのことよ、ね?」
 なるほど。
 続きを促すように見つめるおれを、町田がこわばった顔で見た。
 気づいたらしい。
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