王女ちゃんの執事2『ひ・eye』焼きそばパン、リターンズ。
 最後の3科目、木村はカンニングし続けてみせた。
 覚悟は決めている。間違いない。
 なかなかケッコウな後攻ぶりだ。

「それでは、諸君は2日間の休みですが、最後の夏です。アイウィッシュ、アイハドラーンドハーダー、ウェナイワズ、ヤーング、などということにならないように。しっかり気を引きしめて勉学に励みなさい」
 ガイコツマンの説教なんて誰も聞いちゃいないとはいえ、木村は普通じゃねえ。
 なにしろ、頬杖をついてそっぽを向いた顔が笑っている。
 第2ラウンド、先攻は木村。
 おれの吐き気は腹がへってるからか? 
 違う気がする。


「加藤さん!」
 校門で待ち合わせた町田は、塀に取りすがって真っ青な顔でおびえていた。
(わり)ぃ。ぶっ倒れてたら謝りようもなかったな」
 力なく首を振る町田に、王女さまパワーのおすそわけをするべく手を伸ばすと、町田は泣きそうな顔で一瞬だけおれの手にふれて背筋を伸ばした。
「ありがとうございます。でも、もう大丈夫です。入れてもらう方法を覚えました」
 入れる?
 疑問が顔に出たんだろう。
 木村の背を追って歩き出した町田は、ちらっと隣りのおれを見てまつ毛をふせた。
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