王女ちゃんの執事2『ひ・eye』焼きそばパン、リターンズ。
 開いたドアに木村の身体を投げこむと、町田が「うっ」とうめいて、おれにすがりついてきた。
 木村にダメ色がもどったらしい。
「く…そ、野郎!」木村がギリギリとおれをにらみつけてくる。
「てめ、なにさまのつもりだ、加藤!」
 おれさまは王女さま。
 言える雰囲気はもちろんないから仕方ない。
「おれさまは、友だちさまだ! ばか野郎」
 叫んだとたんに開いたドアの前には足立がいた。
「ど…ういう、こと? さっきの……どういうこと、浩ちゃん!」
「…………」「…………」「…………」
 見たんだな。
 木村が線路に飛びこもうとしたのを。
「どうよ、木村。3対1だ。舌でも噛み切ってみせるかよ、弱虫がっ」


 駅前のドラッグストアのひと気のない露天駐車場で、足立はうずくまって泣いている。
 木村は車のボンネットにケツを乗せて放心している。
 町田は、ふたりの前でスーハーと深呼吸して臨戦態勢。
 おれは3人を視野に収めながら――惑っている。
 ここからどうするか。
< 30 / 37 >

この作品をシェア

pagetop