王女ちゃんの執事2『ひ・eye』焼きそばパン、リターンズ。
「わかんねえ。わかんねえんだけど、さ」
「加藤さんは、怖くないですか? ひとりぼっ…ち」
 町田の声が震えた。
 足も止まる。
 やっちまった。
 町田がずっとひとりぼっちだったことは、もう聞いて知っているのに。
「おれは――…」
 うわ。
 なにを話そうとしてんだ、おれ。
「おれは、わかんね。今まで本気でひとと向きあってこなかったから」
「…………」
 止めようもなくこぼれる本音。
 見えてんなら見せていいよな? なんて。
 そんなのはおれの甘えだって、わかってるんだ。

「おれは、見えるものすら見ないで。平然と生きてきたんだな」
 胸にすとんと納まった結論。

 歩き出したおれの斜め後ろを町田は黙ってついてくる。
 見えないものを見る男には、言わなくても伝わることがあるようだけど。
 でも、でもさ。
 言葉にできることは、言葉で伝えてやるほうがいいに決まってる。
 そうだろ? 王女さん。
「おれ、信じてるぞ、おまえのこと」
「……はい」
「…………」
「…………」
 一歩一歩、町田の脚の運びが重くなる。
 どうしたよ、むかつく高機能男。
「泣くな」
「はい」
 泣かせておいて言う言葉じゃないけどな。
「おれは、いじめっこらしいから。おまえは王女さんに、かわいがってもらえ」
「笑って…ますよ、王女さま」
 ああ、そうかい。
「だからって、めんどうなのはもうこりごりだからな」
「――――はい」

 1拍おくれた町田の返事の意味を聞くべきか、聞かざるべきか。
「ま、いいや。腹へった」
 昼時の混みあうファストフード店から漂う匂いに負けてしまったのが運のつきだったとは。


 * * * 


最終的にオムニバスになる短編です。
次回は 第3話『き・eye』
男の()の物語。
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