王女ちゃんの執事2『ひ・eye』焼きそばパン、リターンズ。
 校門を出るなり「いぇーい。バスげっちゅー!」
 五十嵐は華やかに手を振って、校則違反ギリギリの短いスカートをひるがえしながらバスに乗りこむ制服の列に走っていった。
「試験前にケンカとかしたらダメだよー。気になって集中できないっしょ。仲直り仲直りぃ」などという、見当違いもはなはだしいひと言を残して。

「ケンカって……誰と誰がです?」
 背中から聞こえたつぶやき声は振り返らなくても町田。
 黙ってあとをついてきていたのは気づいていた。
「おれは駅まで歩く派だ。どーすんの? 気分…治ったかよ」
「――はい」
 従順な後輩。
 全力疾走で振りきってやろうか、なんていじわるは考えるそばから霧消。
 なんでも〔めんどくさい〕がプライマリなおれは、町田と並んで駅まで歩くはめにおちいった。

 肩を並べて仲良く下校する3年男子と1年男子。
 どっちの知り合いが見ても〔変〕確定。
 ため息をついたおれの横で、町田がうつむいた。
「あの、おれ――…」
「おまえ、目ェつむって歩くとか、できねえの?」
 顔を上げた町田の目玉には明らかに「?」マーク。
「だからさ。今みたいにうつむいてりゃ、やべーもん見なくてすむんじゃねえ?」
 おれは真面目に進言してやったのに。
 町田は唇を引き結ぶと眉をゆがめて笑いやがった。
 いわゆる苦笑ってやつだ。
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