王女ちゃんの執事2『ひ・eye』焼きそばパン、リターンズ。
「目で見てるわけじゃないんです」
「はあ? 目で見なかったらなにで見るわけだ?」
 眉間にシワが寄ったおれに町田が見せたのは今度は満面の笑顔。
「でも、うれしいです! 加藤さんが、おれなんかのことを心配してくれて」
 いや、心配してねえし。
 顔の前でブンブン手を振りたい気分を霧散させたのは、それが心からの言葉だと信ぜざるをえないほど町田が無防備だったせいだ。
 なにしろ毎度むかつく身体能力を見せつけてくれる男が、歩道の段差でコケたくらいだから。
「うわ、びっくりした」
 つぶやいた町田が照れくさそうに笑う。
 ひとの抱える絶望が無間にわく地獄に生きている哀れな男とは思えないほど、感情が素直に顔に出る町田は、腹黒さが顔に出ないおれよりよっぽどかわいいだろう、王女さんとやらには。
 もし本当に、そんな女がいるとして、だけども。
「だいたい、おれ、加藤さんのこと、よく知りもしないで失礼でしたよね」
 はい、失礼です。
 今頃わかったのか。
「加藤さんにだって、つきあってるひといるのに」
 はいィ?
「五十嵐に確かめたんですよ、加藤さんのこと好きなんだよねって。そうしたら笑われちゃいました。加藤さんのことは大好きだけど、加藤さんには好きなひとがいるじゃない…って。おれ、五十嵐と違って、そういうの、言ってもらわないとわからないんで」
「…………」
 いや、おまえ、ここ、笑うところじゃないし。
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