王女ちゃんの執事2『ひ・eye』焼きそばパン、リターンズ。
 そもそも笑ってる場合じゃないと思うぞ、おれら。
「加藤さんが今、許してくださってるのは…わかるのに」
 それな。
 それも笑えねえ。
「五十嵐すっごく最近きれいなんです。おれ、ダメ色から回復したやつなんか見られると思わなかった……。本当に加藤さんには感謝してるんです。さっきも助けてもらっちゃったし」
 助けたのは王女さんなんだろ? とはツッコまない。
 なにしろそれで思いだした。
 新たなUFO=あんのうん ふらふら おぶじぇくと。
「おまえ、今度は誰見たの? 顔とか知ってるやつか?」
 町田は小さく首を振った。
「あのときは直前に王女さまに呼ばれたので、うれしくて無防備にガードを解いちゃって。それでいきなり脳を揺すられちゃったんですけど。近づいてくる波動に負けてしゃがみこんだあと、すぐ周りの色とまざってしまって……」
 王女さまに呼ばれたって……。
「つまり、おれの近くからわいたって、こと…か」
「そう…ですね。同じくらいの深度から噴き出したかんじです」
「…………」
「…………」
 おれも頭の中がぐるぐるまわりはじめたが、町田もなにか思いさしたようだ。
 示しあわせたわけでもないのに、おれたちは路側帯の植えこみにローファーのかかとがこすれるほど道端に寄って、歩行者をさけながら立ち止まっている。
「…………」
「…………」
 五十嵐の件がある以上、これを笑い飛ばしていい確率はほぼ30%。
 ゼロじゃないのは、おれが18年間(つちか)ってきた人の世の常識が、こんなことはありえないと未だに抵抗しているからだ。
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