王女ちゃんの執事2『ひ・eye』焼きそばパン、リターンズ。
「すみません。テスト前だし、ただ感情の起伏が激しいだけのひとだと思いますから。本当にすみません、加藤さん。忘れてください」
 町田よ。
 おれを巻きこむまいとするその姿勢は気にいった。
「…………」
「…………」
 でもな。
 心当たりがありすぎて、そんなことはできないなんて。
 30%の常識にかけて絶対に言わないけどな。



 それに気づいたのは2科目めの英語コンポジションのとき。
 英語は数少ない得意科目だから、終了20分前には余裕で全問解き終わり、ひまに任せて長文読解問題を読み返して楽しんでいた。
 ゆーきゃのっとびーとぅけぁふぉー
 頬杖をついて黙読している耳が聞き取る違和感。
 英語が得意なおれは、つまり耳もいい。
 耳を澄ます。
 シャーペンが机を叩くカツカツや。
 カサカサと鳴る答案用紙。
 衣擦れの音。
 チャックの開閉音。
 コシコシときしむような摩擦音は消しゴムだ。
 なら、これは?
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