Fw: R-17〜もう一度、人生をやり直したいですか?〜
───バタンッ! ドタドタドタッ、と慌てて階段を降りると母の「もう少し静かに降りなさい!」と、一喝する声が聞こえてきたけれどそれどころではない。
バクバク心臓が激しく鳴り過ぎて、若干の息苦しさを感じる。
私が慌てて飛び込んだ先は洗面所で、鏡に向き合うまで緊張で数秒掛かった。
恐る恐る薄目を開けて鏡の中の自分を凝視する。
そこに映っていたのは───、
───私、……だけど私じゃない私。
信じられなくてペタペタ顔や身体を触って確認するも、鏡という視覚から受け取る情報と同じ感触で。
思わずその場にペタリと座り込んでしまった。
……明らかに、32歳の私よりも若い。
肌艶も違えば、髪の長さだって昨日までの私よりもずっと長いし、茶髪に染めていた髪色だって鏡の中の私は真っ黒だ。
何が起きたのか全く分からない。
分からないけれど……多分、私は、
──“タイムリープ”──。
したのかも……しれない。
タイムスリップと違って、自分の意識だけが過去や未来に飛ぶアレだ。
その時、ハッと深夜の奇妙なメールを思い出した。
もしかしてあのメールの『Fw:』の『転送』の意味は私の“意識”の事で、『R-17』は“17歳限定”……と、いう事、だったり、する……?
こんな非現実的な事が実際自分の身に起きるなんて……と、洗面所に座り込んだまま呆然とする。
するとそこに丁度兄が入ってきて、兄の若さに驚いた私と、座り込む私に驚いた兄とでお互い叫びあってしまって、『藤崎家』は朝から大騒ぎとなった。