Fw: R-17〜もう一度、人生をやり直したいですか?〜
声を掛けられた智政が西野さんの方を向き、また口元を拳で押さえて欠伸をしながら挨拶に答えている。
そんな智政を見て、西野さんが笑いながら智政のブレザーの裾を引っ張った。
───たった、それだけの事なのに。
胸が締め付けられるような感覚に、私は慌てて赤星の方へと身体ごと向きを変えた。
今は“まだ”私と智政は赤の他人のはずなのに、公開不倫でも見せつけられているような気分になる。
私が急に身体の向きを変えたせいでふらついたところを、赤星が腕を掴んで支えてくれた。
「なに、どした?」
「ご、ごめん、赤星。ありがとう」
……そうだ。
今の私には、赤星がいる。
───もしかしたら、未来を変える事だって出来るかもしれないのだ。
……あんな、あんな惨めな未来はもう懲り懲りだ。
そっと赤星を見上げると、バッチリ目が合った。
ドキッとして目を逸らそうとした私を、赤星が追い掛けるように屈んでわざと目線を合わせて顔を近付けてくる。
それだけで、私の顔はもう真っ赤だ。
すると、赤星がそんな私を見てクッと楽しそうに目を細めて笑った。
「チューは二人っきりになるまで我慢してね?」
「……っ!」
ぶわりと更に赤くなった顔が恥ずかしくて、赤星の顎を手でグイッと上へと押し上げる。「近いっ、変態!」と小声で叫びながらも、どうしようもなく心臓がドキドキと煩く鳴り響く。
──昨日までの私が、忘れてしまっていたこの高揚感。
もう……忘れてしまいたくはない。
そう、強く思った。
あんな風に、ただ、単調なだけの毎日になんて戻りたくない。
……だから私は、そっと心に誓う。
未来を変えてみせよう、絶対に──と。