Fw: R-17〜もう一度、人生をやり直したいですか?〜
聞き覚えのある声に慌てて後ろを振り返ると、まさにさっき見たばかりの智政と西野さんがいて。
不意打ちの対面過ぎてつい目を見開いてしまった私を、二人とも不思議そうな表情で見ている。
……そりゃ、そうだ。
高校の時の智政と言葉を交わした記憶は私の中には一切ない。
さっき電車の中では無意識に視線が合ったけれど、今この瞬間は完全なる初対面だ。
それなのに私のこの態度。……変に思われて当然だ。
彼等の反応こそが当たり前で私が挙動不審過ぎるのだと分かってはいるけれど、一気に心拍数が上がって平静を保ちたいのに緊張で中々声が出ない。
慌ててつい智政の方だけを見てしまい、目が合ってドキリと心臓が飛び跳ねた。
「えっ、あ、……! ゴ、ゴメンッ!? どうぞ!!」
自分でもビックリするくらい顔が熱くて、ついでに声も裏返る。
今の私、絶対顔が真っ赤だ。
動揺が隠せなくて大袈裟な身振り手振りでシューズロッカーを差し出しながら退いた私は、ロッカーのクラス表示をチラリと見て、ハッと思い出した。
ここ、2組じゃんっ! 私7組なのに……!
朝から智政に会ってしまいさっきから彼の事ばかり考えていたからか、智政に聞いていたクラスの記憶と自分の記憶とがごちゃ混ぜになっていた。
慌てて7組のロッカーの方へと向かうと、赤星が首を捻りながらついてくる。
「お前マジで大丈夫? なんか今日すげぇ変だけど」
「……いや、ダメかも。スゲェヘンカモ。赤星、私今日ずっとこんな感じだろうからフォローお願い」
「ぶははっ! マジか! おっけーい」
冗談だと思っているのか、赤星が楽しそうに吹き出して笑った。先が思いやられると思いつつも、赤星のこのおちゃらけた性格に正直今は救われる。
だからつい、私もつられて笑ってしまった。
───……こうやって笑うの、久々だ。
夫婦の会話が無くなったころから私は、今みたいに笑う事がなくなっていたから。