ベランダでキスする関係の名前は?
「……重たいのは重々承知だし、依存してたことは間違いない。でも今も好きだし…」
好きな人の好きなものを見て思い出す。
好きな人の好きなものを好きになった自分を誇りに思ってしまう。
「…………吹っ切れるのって難しい。」
目の前にいる智樹に何話してるんだろう。
こんな話、軽く流してほしい。
これはただの、私の独り言。
別に受け止めなくて良い。……それなのに…。
「無理に忘れようとしなくたって良いだろ。」
氷のように冷たくなった心を溶かして包み込む優しい声音。
「茨(いばら)の道なのは間違いないとしても、諦めたくないなら、忘れられないなら…そのままでも良いじゃん。」
「………」
「それだけ大好きなんだろ…?」
「…………うん…」
智樹のくせに。
………いや、この反応は良くない。
智樹のおかげで、スッと心が澄んだ。
「………ありがと。」
「………お前から礼言われるとか気持ち悪いわー」
「っ…最低!」
「……ずんだ餅はずんだ餅らしく、呑気にスイーツのことだけ考えてろ、ばーか。」
「意味わかんないし! 智樹は国語力なんとかした方がいいよ!!」
いつもの言い争い。でも、何故か嫌じゃなくて、こんなやり取りがずっと続くのも悪くないなんて思う。
そして喧嘩の合間。
「…………美鈴はそうやって威勢が良い方が似合ってるよ。お前が元気ないと調子狂うし。」
「………うん、ありがと。」
智樹がいて良かった。
こんなにもコイツに感謝を抱く日が来ようとは。
人生何があるか、わかったもんじゃない。