眼鏡王国記 ~グラッシーズの女神~
ふと、やさしい声が耳に届く。
見れば、イケメンホストが客のマダムを瞬殺してきたであろうその破壊力抜群の爽やかな笑顔で眼鏡を指さしていた。
『いいんですか!?』
『もちろん』
一瞬、その悩殺スマイルにドキッとしたが、NO眼鏡だったことが幸いし綾乃はすぐに気を取り直して、ゆっくりと七色の眼鏡を顔にあてがってみた。
──その時だった。
パアッと、一瞬にして辺り一面が眩い光に包み込まれていく。
その眩しさに思わず目を閉じると、今度はまるで魂が肉体から引き剥がされていくようなそんな不可思議な感覚におちいった。
意識だけがふわふわと離れていくような、そんな状態。
しかし、それも長くは続かず、すぐに辺りは静寂に包まれていった。
すべては一瞬の出来事だった。
気が付いた時にはイケメンホストの姿はなくなっていて、それどころかそこはフリマ会場ですらなく、冷たい石造りで吹き抜けの広い空間だった。
見回してみると、少し離れた場所に2人の人物が立っていて、一人が先ほどから会話をしているローブ姿の銀縁眼鏡の男性。もう一人は鎧を着た黒縁眼鏡の男性だった。
そして、ここはどこかと訪ねたところ……現在に至る。