眼鏡王国記 ~グラッシーズの女神~
二章
「はああうぅ~」
うっとりと見惚れる。
空想を抜きにして、まさか現実でそんな仕草を自分がすることになるとは綾乃は思ってもみなかった。
だが、それも仕方のないことなのだ。
なぜなら……。
「「「綾乃様!」」」
一斉に片膝を付き綾乃に向かい頭を垂れる面々。
しかもそのすべてが白銀の鎧を身につけた凛々しいイケメンたちなのだ。
もちろん全員がよく似合う眼鏡をかけている。
彼らは、眼鏡王国の誇る正規の騎士団、眼鏡騎士団(グラッシーズ)。
眼鏡の騎士というだけでも目がハートなのに、さらに女子なら一度はされてみたい憧れの片膝ポーズである。
そんなシチュエーチョンに、綾乃はまるでお姫様にでもなった気分でうっとりと浸っているのだった。
しかし、そんな夢みたいな状況が長く続くわけはなく……。
「「「我が国をお救い下さい!」」」
「うっ……」
すぐに現実に引き戻されるのだった。
あの後、ルシウスとファウストに強引に連れ出され、敵が現れたというアルス平原を見下ろす丘の上へやってきていた。
そこでルシウスが集結していた騎士たちに綾乃を神具の使い手だと紹介し、ファウストが騎士隊長らしく命令を下して、綾乃に対し頭を下げさせたのだ。
出来れば、いつまでも現実逃避をしていたいのだが、ここはすでに戦場。
すぐ向こうには敵軍。おまけに綾乃の瞳には、その敵の中にもう一つスルー出来ないものがしっかりと映しだされていた。
「す、救うって言ったって、だいたいなんなんですかあれは!」
綾乃が指さした先、丘の向こうにはRPGに出てきそうな人ならざる異形の化け物たちが蠢いていた。