眼鏡王国記 ~グラッシーズの女神~
「ん?」
「どうしました?」
「もしかして2人は、本気であたしがこれを武器として使えると思ってます?」
「ええ。もちろんですとも。それは正真正銘の【神具】ですから」
「その持ち主なわけだから使い手だろ」
「……」
「だからって1人で戦わせようなんて思ってはいないから安心しろ」
「私も出来る限り魔術で援護します」
2人は満足気に頷く。
だが、
「──使えません」
ぼそり、綾乃は呟いた。
「はい?」
「あ?」
そして、大きく息を吸い込むと躊躇なく叫ぶのだった。
「だ・か・ら! 最初から言ってるじゃないですか! 私はたまたまこの眼鏡をかけたらこの世界にきちゃったんです。これはあたしのものじゃないんです! 不可抗力です! 借り物なんです! 使い方なんて知りません!」
「またまた、ご冗談を」
「はっはっは! あれだけの敵を前にいい度胸だ」
「嘘じゃありません!」
綾乃はピシャリと言い放ち、ジト目で2人を見据える。
すると、二人の眉間に皺がよる。
「……そんな、風変わりな格好をしているのに違う、と?」
「南の蛮族の巫女とかじゃないのか?」
「誰がそんな野蛮そうな民族ですか! これは学校の制服です!」
「……本気ですか?」
「まじ……?」
「マジです!」
その語気と真剣な瞳に真実を読みとったのか、目を見開きフリーズするルシウスとファウスト。
シーンと静まり返った3人の間を冷たい一陣の風が通り抜けていった。