眼鏡王国記 ~グラッシーズの女神~


「ん?」


「どうしました?」


「もしかして2人は、本気であたしがこれを武器として使えると思ってます?」


「ええ。もちろんですとも。それは正真正銘の【神具】ですから」


「その持ち主なわけだから使い手だろ」


「……」


「だからって1人で戦わせようなんて思ってはいないから安心しろ」


「私も出来る限り魔術で援護します」


2人は満足気に頷く。


だが、


「──使えません」


ぼそり、綾乃は呟いた。


「はい?」


「あ?」


そして、大きく息を吸い込むと躊躇なく叫ぶのだった。


「だ・か・ら! 最初から言ってるじゃないですか! 私はたまたまこの眼鏡をかけたらこの世界にきちゃったんです。これはあたしのものじゃないんです! 不可抗力です! 借り物なんです! 使い方なんて知りません!」


「またまた、ご冗談を」


「はっはっは! あれだけの敵を前にいい度胸だ」


「嘘じゃありません!」


綾乃はピシャリと言い放ち、ジト目で2人を見据える。


すると、二人の眉間に皺がよる。


「……そんな、風変わりな格好をしているのに違う、と?」


「南の蛮族の巫女とかじゃないのか?」


「誰がそんな野蛮そうな民族ですか! これは学校の制服です!」


「……本気ですか?」


「まじ……?」


「マジです!」


その語気と真剣な瞳に真実を読みとったのか、目を見開きフリーズするルシウスとファウスト。

シーンと静まり返った3人の間を冷たい一陣の風が通り抜けていった。

< 9 / 19 >

この作品をシェア

pagetop