マネキン少女
あの日から、私は徐々にこうなった。


女の子らしい色
制服以外のスカート
フリル


その全てが怖くなり、どちらかと言うと男の子っぽい格好をしてしまう。


別に男性になりたい訳じゃない。女で居る事が怖いだけなんだ__


キッチンから作り立ての食事のいい匂いがするが、気分は重い。


本当はこのまま食べ物も口にせず、この世から消えてしまいたい。


でも、そんな事は出来るわけない。


諦めに似た感情を感じながら、1階に降りるとリビングに置かれたテーブルの椅子に腰掛けた。


たったそれだけの行動で気分が悪くなるのは、同じ空間に春が居るからだろう。


「あれ?るるちゃん。また、身長伸びた?」


何事も無かったかのように、そう聞いてくる春に向けた私の憎しみは無駄にしか思えない。


「……」


ただ、私に出来る事は春を無視する事だけ。


それが、私なりの精一杯の抵抗だった。


本来なら美味しいだろう食事が砂を噛んでいるようにしか思えない。


ただ、生きる為の栄養供給を済ませると出来るだけ早くシャワーを浴び部屋に籠る。


この世でひとりぼっちになったかのような、虚しさに侵されて気が狂ってしまいそうだ。


お前なんか、誰にも愛されない__


何者かに耳元でそう呟かれたかのような気がして、背筋が凍る。



< 14 / 181 >

この作品をシェア

pagetop