マネキン少女
今日の朝のお礼を言わなきゃいけない。
そう思った私は、ヒロのいる場所にゆっくりと近付いた。


「るるちゃん!やほー!!」


ヒロとは何度か話した事のあるレベルだが、私の事を名前で呼んでくれる。


大体のクラスメイトは私を苗字で呼ぶから、名前で呼んで貰える度に嬉しくなってしまう。


笑顔。


そう言いきかせながら、頭の中で話す言葉を組み立ててゆく。


「ヤホー!今日の朝はありがとう!」
「え。俺、何かしたっけなー?」
「その……。ラブレターの事……」
「あーね!」


わたしのせいで、ピエロになってしまった事が申し訳無いのに、肝心のヒロはなんでも無かったかのような表情で私の目を見ている。


「本当にごめんなさい!!私のせいでからかわれちゃって……」


災難だよね。


「え!るるちゃんのせいじないない!!てか、大体の流れは聞いたけど、そんなイタズラする奴に心当たりないの?」


ユリカの顔が浮かんで、消える。


「うーん。分からない……」


そんな事より、問題なのは私の不注意がヒロに迷惑を掛けた事だ。


ちゃんと手紙を保管していたら、こんな思いをさせる事は無かったのが、事実。
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