マネキン少女
「皆、1度くらいは考えた事有ると思うけど……ね?」


そう言った瞬間、ヒロの表情が一瞬だけど真剣な眼差しに変わった。


「まあ、なー!俺なんてしょっちゅう!」


そう言って、背筋を伸ばしたヒロの横顔は切なそうで、やたらと美しく見えて、今にも消えそうで。


「えっ!大丈夫?なんか、悩みあるの?」
「え!聞いてくれるの?」
「うん、なんでも聞くよ……」


違うんだ。


私は、ヒロの事を考えてこんな言葉を発した訳じゃない。


そりゃあ、私なんかに話してヒロが楽になってくれればホッとする。


でも__


それ以上に、誰かの不幸話が聞きたかった。


この世の中でキツい思いをしているのは自分だけじゃ無いんだと言う事実を、確認したかったのかも知れないね。


「るるちゃん!」
「はい!!」
「今から言う事は誰にも言わないでくれる?」


真剣な顔のヒロの、漆黒の髪が風でなびいて同級生とは思えない色気を感じてしまう。


肌に滲む汗さえも、綺麗に思えるから不思議だ。


「言わないよ……。言う訳無い……」
「だよね、るるちゃんは良い子だもんね……」


早く__


そんなに綺麗な貴方の闇を覗かせて。
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