マネキン少女
なにも変わらない。


そんな毎日に飽き飽きすると同時に、諦めに似たような感情を覚える。


運動靴から上履きに履き替え教室に入った瞬間、生徒達が微かにどよめく。


気のせい、気のせい。


自分にそう言い聞かせながら、椅子に座ったが明らかにいつもとは違う視線を浴びている感じがする。


「羽生さん!!」


私の名前を呼んだのは、クラスの中心的グループの一員で有るひなたで、その手には私が載った雑誌が大切そうに握られていた。


あまり話した事すら無いひなたが、私に話し掛けてくれた理由が手に取るように分かる。


「あ!その雑誌……」
「あー!やっぱり、これに載ってるの羽生さん!?」
「うん。ほんの少しだけど……、私だよ!」


そう言った瞬間、ひなたの瞳がキラキラと輝いた。


ひなたから私に向けられる視線に快感を覚えてしまうのは、何故だろう。


「羽生さん凄い……」


そう呟いたひなたが、同じグループのめぐとりんに向けて手招きをする。


それを合図に、私の席にクラスの中心的グループのメンバーが集まった。


「ねえねえ。これ、羽生さんだよね。凄く綺麗!!」


クラスのマドンナ的存在のめぐが、私に話し掛けてくれている。


男女共に人気が有り、誰にでも笑顔で話す女の子。そんな、めぐにずっと憧れていたから話し掛けられるなんて嬉しくて堪らない。

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