マネキン少女
お願いだから、もう止めて__


そう祈っているうちに時間だけが過ぎてゆく。


余りの恐怖に現実から逃げたくて瞼を閉じた。


荒い吐息
金属の音


身体を硬直させていると、今まで感じた事の無いような痛みが下半身を貫く。


「痛い!!」
「声を出さないで」


声を出したら酷い目にあわされる。


報復が怖くて、ただただ我慢する道を選択した。


視界が涙で滲んでユラユラ揺れる。


私はコンプレックスの塊みたいな人間だった。


同級生と比べると余りに発達した身体。


デカい身長。
発達して、少し膨らんた胸。


周りの同級生は私になぜか『愛人』というあだ名を付けた。


あたしの視線は完全に死んで空中を眺めたが、涙のおかげモザイクがかかったかのような世界が見えた。


そうしているうちに春のしたい事は終わる。


無言で乱れた服装を直したかと思うと、部屋から出て行った春。


その瞬間、やっと本当の自分に戻り溢れる涙を手で拭うと長い間呆然とした。


私の処女は12歳で従兄弟に奪われたんだ。


それを痛い程実感しながら、服を整えてゆく。


何事も無かったかのように、部屋を出ると泣きそうになりながら1階に降りた。
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