マネキン少女
確かに楽しかった。


「凄く、楽しかったの……」
「だよな!それが良く表現された1枚だったよ!」
「それに__」
「んん?」
「初めて自分を認められた気がして……。気持ちが楽になれたの……」


風か吹き、ヒロの漆黒の髪がサラサラと揺れる。


笑顔がやたら綺麗で、ヒロが被写体になってくれるなら写真が撮りたいだなんて思っていると、優しく頭を撫でられた。


その仕草がやけに暖かくて、切ない。


「俺は、認めてるから!」
「へっ?何を?」
「頑張り屋のるるちゃん!」
「ありがとう……」


ヒロの目に写っている私は、そんな感じなんだ。


今まで頑張った事なんて無いからしっくりこないけど__
頑張るくらいなら、私でも出来るなんて自分に暗示をかける。


「じゃあ、俺はこの辺で!!」


それだけ言うと、私に1人の空間を戻すヒロ。


1人になった私は、自分のこれからについて考えさせられてしまう。


私はどうしたいのだろう。


何も無いと思っていた私を救い出してくれたのは、紛れも無くモデルの仕事。


なら、そこで頑張りたい__


自分の為にも、私を救い出してくれた人の為にも__


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