マネキン少女
1階には人の気配を感じない。


その事実が春が計画的犯行で私にあんな事を行ったんだと、実感させられる。


誰か居たら。


いや、そうだったとしても私は助けを求める事など出来なかったと思う。


涙で歪む視界をクリアにしながら、バスルームに向かうと、しっかり鍵を掛けて服を脱いだ。


腫れた目
棒切れみたいな身体


洗面台の鏡に映った私の姿は滑稽で悲しくなってしまう。


12歳なのに大人に見えるこの身体が恨めしかった。


バスルームに移動し、シャワーをひねると冷たい水が足首に掛かった。


しかし、その冷たさすら感じない程心は冷え切っていた。


鏡に映る自分の全てが汚れにしか見えなくて悲しくなってしまう。


シャワーから出る水がお湯に変わったと同時に自分の身体を勢い良く洗う。


いつもより力を込めて擦っているのに、私の身体から汚れが落ちる事は無いように思えた。


「汚い!汚い!汚い!」


汚すぎる自分が哀れで泣けてくる。

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