皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
その後ろ姿を見送っていると、入れ違いに入ってきたサリーが突如、私の膝に泣きついてきた。
「ゔぅぅ⋯⋯アイリスさまぁぁ」
「サリー! どうしたの?」
膝に顔を埋めて、シクシク泣き出した彼女の肩に両手を添えてなだめる。優しいサリーのことだから、さぞかし心配してくれたのかもしれない。
その背中をゆっくり撫でながら「もう大丈夫よ」と微笑んでいると。いつの間にか室内にいたカルム団長が代わりに口を開く。
「心配もそうだが、お前の体調不良に気づけなかったと、ずっと自分を責めてたんだよ」
「え⋯⋯」
驚いて言葉を失った私は、窓際で背を向けている赤い頭へ視線を移す。
「今回のようなことがあった場合、一番最初に責任を問われるのは侍女や近侍だ。場合によっては罪に問われることもある。そうでなくとも、主が無理すると振り回されるんだ。そのくらいわかるだろ? 陛下だって一度公務を片付けあと、一晩中ここにいらしてお前の様子を気にかけていたんだ。自身の判断を見誤ることで、周囲に与える影響くらいきちんと理解しておけ」
鋭い指摘に心臓が縮み上がる。しかし正論だ。
私は俯いて唇を噛みしめて謝罪をつぶやく。
今回の根源は私にある。意地を張らず夕食へ出向く前に、不調を正直に伝えるべきだったのだ。使用人たちが責任を問われることも、すっかり抜け落ちてしまって。弱み見せなくないという意地ばっかり張って。周りに迷惑をかけてしまった。怒られても仕方がない。