皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「アイリス様」
思案を取り止めてサリーを見あげると、彼女はとても嬉しそうに、私の手を優しく包み込んだ。
唐突な行動に首を傾げると、彼女は諭すように口を開く。
「侍女として、ひとつだけ報告させてもらいますことをお許しください。昨夜のルイナード陛下には侍女一同、惚れ惚れいたしました」
「⋯⋯急にどうしたの?」
意図が掴めず、顔をしかめてしまった。
確かに彼の見目麗しさには、侍女たちが熱を上げるのは普通のことだと思うのだけれど――そういうことではないらしい。
「アイリスさまが倒れてしまわれたあと、ルイナード陛下は必死なお姿で、ここまでアイリスさまを抱いて運んでくださいました。普段の汗一つかかないようなクールで威厳のあるお姿ではなく、とても人間味溢れたと言いますか⋯⋯熱がこもっていたというか、――サリーはそれにとても愛を感じました」
「愛⋯⋯?」
うっとりと理由を述べていくサリーから、もっとも信じられない言葉が聞こえてきて、心に影が走る。