皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「はい。ハリス先生にも細かく容態をお聞きになっていましたよ。侍女である私には『目を覚ますまでここにいさせて欲しい』と申し出てくださいました。とても献身的で、サリーは深い愛を感じましたよ」
「――なにを言ってるの」
胸が痛くて、聞いていられなかった。
確かにサリーの言うとおり、ルイナードが私をここまで運び、朝まで私の様子を見てくれたことは真実だろう。
けれども、私はお父さまの事件があった日のことを、未だに忘れられない――。
彼から感じられたものは、私に対する狂おうしいほどの嫌悪感。絶望に陥れようとする思惑が貪欲に感じられた。
そんな相手に今更愛情を抱くことなんてあるわけがないし。
なにより、お父さまの命を奪ったルイナードに対して心を許すことなど、言語道断である。
愛は――私たちの間に一番あってはならないものだ。
「⋯⋯まだ、あまり顔色がよくありませんね。ハリス先生がいらっしゃるまで、もう少しお休みしましょうか」
「えぇ⋯⋯そうするわ」
サリーの気遣いに調子を合わせて、シーツを頭までかぶる。
そして、さきほどの無防備なルイナードの寝顔を掻き消すようにして、必死に目を閉じることに専念した。