皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
ルイナードとの食事を前に倒れたあの日から、定期的に城の在中医師のハリス先生が訪れて、妊娠状況と健康状態を細かくチェックしてくれるようになった。
最初は毎日。しだいにそれが三日、五日置きとなり、今では週に一度ほど。
はじめは行き過ぎた待遇に気後れしたけれど、今となっては先生との会話もひとつの楽しみとなっている。
この日も朝食を終えたころに、銀髪を一つにまとめた、五十代の紳士が私の部屋を訪ねてきた。
「最近は、貧血の方は改善されてきたようですね。顔色と良くなり、ふらつきも少なくなってきたようで安心しました。赤ちゃんの方も三ヶ月と半ば頃になりましたね」
「早いものですね」
一通りの診察を終えたハリス先生は、バインダーに挟まれたカルテへサラサラと達筆な文字を書き込みながら柔らかく微笑む。順調な経過にうれしくなった私も自然と笑顔になる。
ハリス先生は皇城に在中する医師の中で、最も腕のいいお医者さまだとクロードさんが教えてくれた。ここに来て八年になるそうで、それまでは隣のネスカ国の王宮専属医として後継者を育てていたらしい。
とても優しくて物腰が柔らかくて、とってもみんなから慕われる、とっっても素敵な先生なのだけれど――
彼は今日も容赦なく宣告する。