皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】

「あら、またお花が届いたのね!」

「あ、アイリスさま。検診は問題なく終えたのですね」


私は緩やかな足首丈のワンピースの上に、濃紺の薄いローブを羽織ってからサリーの隣に立つ。

出窓には、バスケットの中に溢れる彩り豊かなバラの生花と、水の入った大きな花瓶が並んでいる。

花は一番美しく咲き誇っている状態だ。


「ここの城の花はいつ見ても綺麗。それに、黒いバラがこんなにもあるなんてすごいわ」


カラフルな中からひとつ、黒いバラの生花を手にして状態を眺める。

黒色は数少ない品種とされるため、サザンメリーに並ぶことも少なかった。


「ふふ、特別に力を入れているんですよ。この近年で、城の薬師達がルイナード陛下のために、瞳の色を変える眼薬を生み出したのです。アイリスさまのお持ちになる、その黒いバラを使用して」

「?!」


ちらりと()ぎるのは漆黒の瞳の美しき仮面の彼。髪と同色に煌めくオニキスのような瞳もまた彼に合って美麗ではあったが――


「⋯⋯へぇ、すごいわね」


⋯⋯言うなれば、このバラのせいでルイナードに騙されたということだ。

頬が引きつりそうになるのを留める。

とはいえ、今更喚いたところでどうにもならない。

気を取り直して、いつものように腕をまくりあげる。

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