皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「今日も私が手直ししてもいい?」
「ふふふ、アイリス様は毎日そうおっしゃいますね。待っておりましたよ」
サリーはそう微笑みながら、自分が手にしていた切バサミを手渡し場所を入れ替わってくれた。
私が外出禁止の生活をするようになってすぐのころから、サリーは毎朝どこからともなくカゴに沢山の花を詰めて現れるようになった。
『あら、サリー! どうしたのその花? 摘んできてくれたの?』
『どなたか存じませんが、退屈なアイリス様へのプレゼントだそうです』
そんな会話をして以来、嬉しいことに花は毎日届けられる。
一体誰が届けてくれているのだろう?
そう思ったのは最初の数日だけで、考えてみれば相手は限られてくるものだ。
私が皇城にいることを知っていて、自由に城に出入りすることが可能な人物。
そんなことをしてくれそうなのは、兄さんから事情を聞いたマーシーか。もしくは、いつも私を気にかけてくれる優しいクロードさん辺りだろう。
兄さんは花より団子といった人柄だし。
ルイナードといえば――⋯あの容姿は誰よりも花が似合うというのに、昔から全く興味のない人だった。
その証拠に、たまに食事を見守るクロードさんが『庭園の花が―――』と話題を降ってくれるのだが、彼は黙りこくって、急に無口になってしまう。
普段から口数は多くない方だが、そうなってしまうと、もはや食卓はお葬式なような雰囲気。どっさり冷や汗をかきちらすクロードさんが不憫になる。