皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】

「アイリス、やっと会えた」


ブラウンのクセ毛にチョコレート色の瞳。カルム団長の隣に立っていたのは、マーシーだ。

絡み合った視線は痛いほど真剣で、私の中に強い緊張感が大きな波となってこみ上げる。



✳✳✳


ずっと立ち作業だったこともあり、サリーは私をベッドへ座らせて背中にクッションを入れてくれた。その隣にテーブルと椅子を用意してマーシーの席を設けてくれる。

自分は近くにカウンターを持ってきて、兄さんが来たとき同様にそこでお茶の準備。一方カルム団長は、ドアの横に寄りかかり出ていく気配はない。少し警戒気味にも見える。

そして私はというと、サリーの淹れてくれたレモン水を口にしながら、ちらりと、テーブルを挟んで前方に座るマーシーの様子を伺う。

アールグレイティーをぼんやり見つめたままの虚ろなブラウンの瞳。マスタードイエローの羽織りと、フリルのあしらわれたシャツ。そして細身の黒いボトムといった、洗練された格好をしているというのに、彼は服装とは裏腹にとても暗い面持ちだ。

一直線の唇はたまに開くものの、なかなか言葉を発しようとしない。理由はなんとなくわかっている。だからこそ私から切り出す話ではない。

そんなふうにして、ほんのり彼の紅茶が冷めてしまった頃、マーシーはようやく沈黙を破った。


「ついさっき、レイニーから全部聞いた」


その一言を合図に、さらにふたりを重たい空気が包み込む。

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