皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
この時間だって、わずかに見出した時間のなかでここまで案内をしてくれたのだろう。軍服を着用しているということは、この後の予定は軍事会議や演習でもあるはずだ。
彼の肩に置いていた手を、いつの間にかソファの上へと戻していた。
なんで、私のためにそんなに――⋯
そこまで考えて、思い留める
いや。だめよ。これらの意味を情緒的に捉えてはいけない。
どんなに優しい言葉をかけられようとも、彼の目的は子供でしかないし。
出産したら私は不要な存在となり、我が子を奪われる可能性だって大いにあり得る。
最後はまた、あの事件のあった日のように⋯⋯。
そう悟った途端に、心が真っ黒に塗りつぶされて息が苦しくなる。
そうよ。
今こそ、彼に――復讐すればいいのよ。
一気に鼓動が暴れ出す。
それに比例して得体のしれない感情が湧き上がってくるけれど、その存在は無視した。
膝の上にある、穏やかな寝顔を見つめる。
『俺を殺す権利をやる』
そういったのはルイナードだ。だとすれば、私はその権利に乗っ取って動くだけ。
私は震える息遣いを落ち着かせながら、彼を起こさないように、指先でスルスルとワンピースの裾をたくし上げた。
身体が強張ってしまうのは、今からいけないことをしようといるからで。相手がルイナードだからではない。
彼の優しさも。笑顔も。もうなんの意味もない、手懐けるためのもの。絆されたら、そこまでなのよ。