皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
柄を握りしめてゆっくりと鞘から引き抜くと、鋭利な刀身が姿を現す。
銀色に輝く刃面はステンドグラスからの日差しにより怪しく輝き。鈍く光るそれに反射する私の顔は、少しの生気もない灰色だ。
無意識に手がカタカタと震える。唇がワナワナおののく。
こんなことをしたら、お父さまは軽蔑するだろうか?
けれども、これは私たちの取り引きだ。利害は一致している。
私は罪に問われることもなく。彼は世継ぎを得られる。
これで、十年間の苦しみから開放されて⋯⋯自由になれるんだ。
『サリーはとても愛を感じました』
――それを期待したら、負けだ。
断ち切るように、大きく両腕を振り上げた。
「――⋯っ」
そのとき。
「――遅い」
パチリと黄金の瞳が開き。
瞬時にルイナードが襲いかかってくる。
とっさに腕を振り下ろしてしまうと、空気の切り裂く音共に、短剣は床へとカランと弾き飛ばさてしまった。
早すぎて何が起きたのかわからない。
そして、瞬く間の出来事だった。
「躊躇すれば、お前がやられる」
肩を抱え込まれた瞬間。
痛みも無く、衝撃もないというのに。
ぐるりと立場は逆転し。
パチッと目を開いたころには、私の体に馬乗りになるルイナード。
大きな右手は私の喉元を捕えていた。
ひゅっと息が鳴る。