皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
全身から力を奪って。脳からは思考を奪っていく。
そこに愛があるのとか錯覚してしまいそうなくらい優しくて。気を抜けば全てを投げ出してしまいそうなほど、魅惑的な口づけ。
胸の奥が燃えるように熱い。全身が震えるほど彼が恋しくなる。
あの一夜を鮮明に蘇らせて、黙らせて、そして唇で説き伏せようとしているような支配的な口付け。
思考も、体も溶かされていく。溺れていく。
彼は悪魔なのだろうか。
なんで、殺されそうになった女にキスなんてしているの?
これに陥落すれば、彼に手篭めにされてしまうだけなのに。
わかっているのに。
身も心も言うことを聞いてくれない。
身体はずるずると、海の底へと引きずり込まれていく。
惑わせないで。
もう、傷つくのはいやなのに⋯⋯。
ルイナードのことだけは、信じたくないのに。
なのに、どうして――⋯⋯
「アイリス⋯⋯」
やっと、とろけるような口づけから開放したルイナードは、苦悩の表情で私の頬を指の背で撫でて――