皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
世継ぎのためよ。
足に力を入れて立ち上がり。そのまま部屋を出ようとしたとき。
「⋯⋯ここだって、陛下が書庫を作るように命じたっていうのによ⋯⋯」
扉が閉まる直前、ブツブツと文句のような低い声が耳に入り足を止めて振り返る。
「なに? なんか言った?」
「――なんでもねぇよ。ほら、いくぞ。あの侍女がうるせーからな」
そう言って、カルム団長はポケットに手を突っ込んだまま私を通り越して先に部屋へと戻っていく。
見張りのくせに、いつも私よりも先を歩いちゃって。
ゆっくりとその後を追いながらも、私の心はルイナードへの言いようのない苛立ちと困惑に占められていた。