皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
そんな悶々とした引きこもり生活は、あれからさらに三週間ほど続いてしまい。ようやく外に出れるようになったこの頃は、新たな季節が見え隠れしていた――。
私たちを見送るサリーは、今日もどことなく心配そう。
「アイリスさま! お気をつけていってきてくださいね。 お腹に赤ちゃんいるんですから、無理だけは禁物ですよ」
「わかってるわ。もう無理はしないから、大丈夫」
太陽光線は遠慮なく熱をふりまき、庭園には陽炎が立っていた。木々の下を歩み進めていても、合間からじりついた日差しが肌を焼き付け、少し歩くだけでドレス下がベタついてくる。
四季のあるヴァルフィエは、最も暑い季節が訪れようとしていた。
ハリス先生から城の外に出る許可がようやく降りたのは、そんな暑い日々の続く、妊娠四ヶ月を過ぎた頃のことだった――。
『近頃は顔色もいいですし、そろそろ城の外を出歩く許可をしましょうか』
かれこれ一ヶ月以上も外に出ていなかった私は、天にも登る思いだったのを、今でも覚えている。
それからというものの、午前中はこうしてカルム団長を引き連れ、父のお墓参りへいくことが日課となった。
薄手のミントグリーンのドレス。レースの羽織り。日避けの大きな白い帽子。花壇で摘んだ花を手にして。最近の私の気持ちは天気と同様に雲ひとつない快晴だ。
隣では暑苦しい軍服を腕まくりをした長身が、空のバケツをぶんぶん振り回して不満を顕にしている。