皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「あぢ――⋯⋯」
「暑いけど、やっぱり外って最高ね」
「んなわけあるか! こんなクソ暑いのによ。全く、いつまで引きこもり生活引きずってんだか⋯⋯」
「一ヶ月も外に出れなかったのよ。しばらくは、外が恋しくて仕方ないわ」
「⋯⋯チッ、陛下の作った書庫に入り浸ってたくせに」
顔を背けて不機嫌そうにブツブツ言っている。
「――なに? また私の悪口?」
「そうだよ、地獄耳」
「あなたね――っ!」
「まだ皇妃でもねーのに、楯突くんじゃねぇ――っ!!」
ほんっとーに、口が悪い!
しかし、そんな傲慢で口の悪い騎士団長とも、毎日顔を突き合わせているだけあって、以前よりは喧嘩の回数がだんだん減ってきた。
『皇妃じゃねぇ!』なんて言いながらも、案外義理堅く優しい彼は、妊娠中の私に対しても知らぬところで配慮をしてくれたりもする。⋯⋯そんなことも重なって、前よりは嫌なやつだとは思わなくなった。
――とはいえ、婚儀の式典を未だ行っていない私が『皇妃ではない』のは本当のことなんだけれど。
水路の横をまっすぐ進み、城の裏手に差し掛かかると、お馴染みの大きな十字架――戦死者たちのお墓が今日も見えてきた。