皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】

「あぢ――⋯⋯」

「暑いけど、やっぱり外って最高ね」

「んなわけあるか! こんなクソ暑いのによ。全く、いつまで引きこもり生活引きずってんだか⋯⋯」

「一ヶ月も外に出れなかったのよ。しばらくは、外が恋しくて仕方ないわ」

「⋯⋯チッ、陛下の作った書庫に入り浸ってたくせに」


顔を背けて不機嫌そうにブツブツ言っている。


「――なに? また私の悪口?」

「そうだよ、地獄耳」

「あなたね――っ!」

「まだ皇妃でもねーのに、楯突くんじゃねぇ――っ!!」


ほんっとーに、口が悪い!

しかし、そんな傲慢で口の悪い騎士団長とも、毎日顔を突き合わせているだけあって、以前よりは喧嘩の回数がだんだん減ってきた。

『皇妃じゃねぇ!』なんて言いながらも、案外義理堅く優しい彼は、妊娠中の私に対しても知らぬところで配慮をしてくれたりもする。⋯⋯そんなことも重なって、前よりは嫌なやつだとは思わなくなった。

――とはいえ、婚儀の式典を未だ行っていない私が『皇妃ではない』のは本当のことなんだけれど。


水路の横をまっすぐ進み、城の裏手に差し掛かかると、お馴染みの大きな十字架――戦死者たちのお墓が今日も見えてきた。


< 148 / 305 >

この作品をシェア

pagetop