皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】

それから、カルム団長とのんびり部屋へ戻る最中。通りかかった騎士団の訓練所が、なにやら騒がしいことに気づいた。

視線を向ければ、小さな闘技場のような敷地の中で、大の男たちがわらわらと深刻そうな顔を寄せ合っているのが見える。

輪の中心には、蜂蜜色髪と、ビスクドールのような顔――兄さんだ。数日前に『忙しくて遊びにいけなくてごめん』と言っていたけれど。なにやら、みんなの表情は不穏そう。

私の足はしだいに止まっていた。


「――どうした?」


心配したカルム団長が、足を止めて振り向く。私はすぐさま訓練所の様子を指差した。


「なんだか、みんな真剣な顔してるから」

「あぁ――今⋯⋯あまり、帝国内があまりいい状況じゃねぇんだよ」


そういったお国事情はあまり詳しくない。察したカルム団長は、言いにくそうながらも口を開いてくれた。

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