皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
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その夜も、ルイナードとの食事を断ってしまった私は、就寝前にバルコニーで夜風にあたっていた。

いつもに増して、心がモヤモヤ落ち着かない。

手すりにもたれて、深いため息ひとつ。

天界のような皇城の庭園の先には、城下街が広がっていて、その先にはどこまでも続くエメラルドグリーンの海が月明かりにきらめく。

普段なら、ここからの夜景を見ているだけで心が洗われていくのに。今日は全然だめみたい。


「反皇帝組織⋯⋯か」


昼間の訓練所の異様な雰囲気。みんなの表情はなんだかとても硬かった。

それを目の当たりにしてしまい、チラチラと過去の残像が浮かび上がる。ルイナードと再会したときは、ここまで思い返すことはなかったのに⋯⋯。

左手に見える部屋の灯りをチラリと視界に捕らえる。


『明日の食事には来てほしい⋯⋯』


ふと、さっき扉の前から聞こえてきた切実な声を思出してしまった。

もう、ずっと顔を見ていない。せめて、ここでの生活に支障をきたさないためにも、うまくやっていきたいと、思ったのに。

でも、これ以上ルイナードと関わるのが怖くて仕方ないの。それがなぜなのかは、今は、見ないフリしている。


「あ⋯⋯」


そこで。体内でその動きを敏感に察知して、つい声をあげてしまった。

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