皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「まぁ、少しの間だけど兄妹仲良くすごそうな! 式典の準備⋯⋯頑張れよ?」
「――もう、やめてよ」
兄さんは私の髪をワシャワシャと掻き回して部屋の中へと戻っていく。
元気づけているのか、ほんとうにお気楽なのか⋯⋯。
髪を直しながら、フッと小さく苦笑がこぼれ落ちた。
式典の準備⋯⋯か。
クロードさんは先程、出兵の情報と共に二ヶ月後に行われることになった『婚姻の式典』に関する報告を置いていった。
『アイリスさまの体調も落ち着いてきたので、婚姻の式典をふた月後に計画しております。体調に無理のない範囲で、準備を進めてまいりましょう』
元は貴族の娘とはいえ、教養なんて、幼い頃にルイナードやマーシーから読み書きを教わった程度で、あとは書物から知識を得てきた。
そんな私がそのまま皇妃になれるのかといえばそれは否というもので。国民にお披露目するまでに礼儀作法を学び、必要な知識を身に着け、皇妃として相応しくなるべく準備を勧めていくことになった。
躊躇する気持ちがないと言えば嘘になる。けれど、ここまできたらやるしかない。